代理店を展開するのは難しい。
BtoB系のサービスを開発し、そのサービスを全国に届けたいと考えたしよう。最初に思い付くのは今であればWEBマーケティングだろうか。ただしWEBについては、当たり前だがWEB経由で探す企業しか顧客にならない。そこで次に考えるのが代理店を増やして、そのエリアで販売して貰おうと考える。

代理店から言われるあるあるなこと

特に日本は国土が狭いということもあり、卸の文化が今も根付いている。御用聞きの様に足繁く顧客を訪問して関係作りをしている地場の企業は意外とたくさん存在する。そのネットワークを活かして自社サービスが営業できたらと考えて、代理店の募集を開始する。ところが、これが上手くいかないケースが多い。

「代理店は増えたんですけど、全然売ってくれなくて。。」
「毎回メーカー同行の依頼があって大変なんです」
「代理店とミーティングすると、機能が足りない、価格が高い、得られる粗利が低すぎる。。って文句ばっかりなんですよ」

代理店施策を展開するメーカーが直面する課題は大体同じである。代理店は増えたけど、売ってくるのは上位数社だけ。逆に代理店管理業務が大変で、代理店自体が重荷になる。毎回同行の依頼が来たり、営業会議に参加するとメーカーへの要望という名の売れない理由の押し付けがあったり。理想を描いて代理店を募ったのに、期待外れとなってしまった。そんな経験をした経営者もいるのでは無いだろうか。

代理店ビジネス成功のポイント

代理店施策を行う上で、成功するためにクリアしておくべきポイントがいくつかある。

・商品力がある
・売り方が決まっている
・同行サポートがある
・粗利が高い(ストック収益になる)

商品力とは、単純に売り易い商品という意味である。例えば、チラシを見せるだけで相手が欲しいと感じる様な商品であるかどうか。細かく説明をする必要がある商品は代理店には向かない。画期的なサービスであっても、顧客にとって効果・効能が伝わり難く(また効果を感じるまでに時間がかかる)、かつこれまで投資していない新しく投資が発生する領域のサービスは売れない。分かり易く、かつ顧客にとって置き換えのサービスかどうかが商品力を見定める上でポイントになる。

売り方は重要である。代理店の営業マンが何をしたら良いのか。どんな顧客に紹介すれば効率良く反応が取れるのか。営業フローを決まっているのか。チラシはあるのか。簡単な説明動画はあるのか。企画書や提案書はあるのか。トークスクリプトはあるのか。想定問答集はあるのか。効果的なデモシナリオはあるのか。見積書のフォーマットは決まっているのか。

売り方が定まっておらず、まずはチラシを持って営業マンに説明をして貰うというパターンでは結果は出ない。直販と代理店の営業マンを使った間接販売では、その難易度は異なる。代理店営業の場合、当たり前だが自社の社員ではないため管理が難しい。代理店の営業は他の商品も扱っているため、片手間で営業する可能性が高い。そうした相手の事情を考慮した上で、売り方を設計する必要がある。

同行サポートは必須となる。ただ、ここで闇雲に同行依頼を受けるとメーカー側がサポートで疲弊してしまう。同行サポートでポイントになるのは、プロセスを定義し、その条件をクリアした同行案件だけに同行することだ。先にも説明した売り方の中の営業フローで、あるステップまで来た案件については同行するなどの条件を明示しておくのだ。

そして売上よりも粗利管理をされている代理店が多いので、粗利が稼げて、それがストック収益となること。これは代理店の経営者にとっては魅力になる。ただ注意が必要だが、営業マンの成績への評価について経営者と話し合っておく必要がある。ストック型の商材の場合、営業マンにカウントされる粗利が低くなる傾向がある。評価方法について先に話し合っておかなければ、営業マンにとって営業する旨味のない商材となってしまう危険性がある。

代理店候補の企業を選定するポイント

代理店になって貰う会社は誰でも良い訳ではない。ここで注意すべきポイントを挙げてみる。

・売っている商品が似ていること
・営業マンをある程度の人数抱えていること
・顧客リストの管理ができていること
・トップセールスマンを担当にアサインして貰えること

とても大切な事だが、売っている商品の類似性はポイントになる。顧客にチラシを渡すだけ。興味があるという顧客を紹介するだけ。そうした紹介型の代理店の場合は不要なポイントだが、営業をして貰うとするなら、絶対的に押さえておくべき条件になる。例えば、形のある物を売っている会社なのか。サービスを売っている会社なのか。それによって営業マンの特性は変わってくる。仮に形あるものを売っている会社に、クラウドサービスなどの商材を売って欲しいと考えても結果は出難い。売っている商品の類似性は非常に重要な観点となる。

営業管理ができているかどうかは重要だが、これは営業マンの人数と顧客リストがどの程度整理されているかで判断ができる。営業組織としては10名以上の営業マンを抱えているか。顧客リストでいえば、顧客ランクなどの条件設定がされているかどうか。この辺りを確認することで、こちら側が営業指導を行った後の実行精度が見えてくる。

最後に代理店として取り組みの初期、トップセールスマンをアサインしてくれるかどうか。例えば新人など経験のない人をアサインして様子見をしようと考えている代理店では、結果は出ない。立ち上がりの数ヶ月で実績が出るという成功体験が、その後の展開に大きく影響を与える。ここは代理店に加盟して貰う際に、経営者と十分に話し合っておく必要がある。

どうして上手くいかないのか?

さて、ここまで説明をしたが、どうして代理店施策が上手くいかないのか。何となく分かってきたのではないだろうか。代理店を募集するメーカーの意図としては、【自社のリソースを使わずに売上が上がる魔法の杖】的な発想で代理店の展開を思い付く。ところが、代理店になる会社としては【片手間の営業で粗利付加ができるのであれば嬉しい】【新規開拓や新人育成になる商品になるのであれば売りたい】と考える。つまりは主力事業のおまけ的な発想で代理店になるのだ。

メーカー側としては力を入れて欲しい。代理店としては主力事業があるので、あくまでも余力で売れる様にして欲しいと、そもそものニーズがアンマッチとなっているケースが多い。代理店を募集し始めた当初は、とにかく条件を緩和して代理店になってくれる会社を増やしたいと考えてしまう。結果として、代理店が機能せずに管理コストだけが肥大化する結果となる。

メーカーとして代理店を募集する前に確認すべきこととして

・直販でも実績が出ている商品かどうか
・売れる顧客像が明確になっているか
・売り方や売るためのツールは揃っているか

この3点はチェックしておく必要がある。少なくとも、直販の段階でこれらの事が揃っていないタイミングで代理店を募集しても、結果は出ないと考えた方が良い。直販と間接販売は違うモデルなんだと認識をして、代理店施策をする上でも、この辺りを練り込んでおく必要がある。

自社の商品やサービスを拡販する上で、代理店施策を検討するタイミングが来るかもしれない。他社の営業マンが売ってくれる、と夢を見るのではなく、どうすれば主力じゃない商品を売りたくなるのかを考え、仕組みを構築する事が大切になる。この仕組みができあがれば、代理店施策は重要な戦略になる。

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