今回は”次々と生まれる経営の理論やフレームワークに振り回されないための方法”について書いてみます。

何が正解なのか分からない事が経営には多くあります。他社と同じ事をしていてはいけないと言われる事もありますし、タイミングによっては他社と同じ事をした方が成長することもあります。

次々と生まれる”正しい”理論

経営理念という言葉からビジョン・ミッション・バリューが大切と言われ、今はパーパスを持っている事がより重要だと言われます。社員の価値観を統一するためには”クレド”を作る事が重要であり、その浸透が社員の働き方をより質の高いものに引き上げると言われています。

売り上げ目標は作った方が良いとする経営者もいれば、売り上げ目標なんていらないという事を宣言している経営者の本がヒットしたりします。新卒社員を早くから採用した方が良いと言われたり、中途採用の方が良いと言われたり。〇〇型組織が今風ですよと言われたり、そうした組織論なんてと否定する人がいたり。。

経営者の周りには情報がてんこ盛り

経営者の周りには、いつもこうした正しいと言われる様々な要素があります。本でもセミナーでも、また知り合いの経営者からも新しい情報が常に入ってきます。悩みや課題を抱えている場合は特に、そうしたアンテナが立っているので、そうした情報に自然と意識が向かいます。冷静に見ると、全く真逆の意見が並び立っている状況が見られるのですが、自分が何となく正しいのではないかと考えていた方向性を、同じく示してくれる理論やフレームワークがあれば興味が湧き、自社に取り入れようと考えます。

会社の目的、戦略の立て方、マーケティング論から営業論。そして組織論や財務・会計に至るまで、様々な理論が世の中にはあります。勉強熱心な経営者であれば、そうした理論を学んで自社に活用しようと考えます。そうしたご相談も受けますし、学ぼうとする意識は素晴らしいです。

信じても良いが信じすぎないこと

経営者から、〇〇理論についてどう思いますか?と質問を受ける事があります。これには、自社にその理論を活かしてみたいという経営者としての思いがある一方で、念のために外部の意見も確認したいという考えがあります。その際に私が心掛けている事があります。

信じたい時は信じても良いし、信じられなくなったら改める

その会社のビジネスモデルや社員数、社風や社長の性格から、明らかに向かないと感じる理論であれば、それに対するリスクも含めてお伝えします。ただ、相談の時点で社長としては試してみたいという意思があるケースが多いので、一度反対をしても納得性が薄い場合は、上記のポイントをお伝えして、応援するようにしています。

会社は99.9%経営者で決まる
経営者がワクワクしてやりたい!と思うことはパワーが宿る
公序良俗に反することでなく責任が取れる事ならやった方が良い

経営者のご相談に乗る時、その経営者自身が最もパワーが出せる方向性を考える様にしています。それは冒頭からもお話をしている様に、世の中にはありとあらゆる”正しい”があるからです。私がその時点で判断する”正しい”が、将来に渡っても本当に”正しい”かは分かりません。

経営者にとって大切なことは、自分のパワーを無駄なく注げること。やりたい!と考えている事に、前例や非常識と呼ばれることであっても、全力で取り組むことにあります。そうした方向性に力が注げると、自然と経営者の状態も好転し、良い風が吹いてくる事が多くあります。

それは”道具だ”と考えること

理論やフレームワークを学ぶことは大切です。知っていることで、選択肢が増えますし、その状況を客観的に分析できる様になります。注意をした方が良いのは傾倒しすぎないこと。信じすぎてしまうと、それだけが唯一の成功パターンだと考えてしまいます。上手くいっている時には活用し、思うような成果が出ない場合は、その時点で違う方向性を選択できること。そうした感覚を持っている場合、理論やフレームワークなどは経営者の力になります。

理論やフレームワークには本質があります。その理論が成り立つ条件。それを活用する事ができるビジネスモデルや人材層など。一定の条件下で生まれ、恐らくは類似の企業で効果を発揮しているケースが多いはずです。大切な事は、理論を当てはめるのではなく、その理論が生まれた背景を理解する事です。その上で、自社の何に活かせるのかを考えること。それができると、理論やフレームワークに振り回されることはなくなります。

まとめ

ただし、信じたいと思った時は信じた方良い時です。そして、どこかで違和感を覚えた時に、その時点で改める事ができるスタンスを持っている事です。経営者は朝令暮改を嫌ってはいけないというのは、ある意味では正解と考えています。違うと思ったら、その時点で軌道修正ができる”勇気”を持っているかどうか。それが生き残っていくために必要なポイントになります。

理論やフレームワークは経営者として、見えない何かを見える状態にし、自社の現状を客観的に把握するための道具として学ぶ事は大切です。どんな理論であっても、それが生まれた背景や本質があります。それを理解した上で、自社への活かし方を考えるスタンスでいること。そして信じたい時は信じて違和感があったらすぐに改める。その考えを持ち続けること。これからもたくさんの”正しい”と言われる理論やフレームワークは誕生します。経営者にとっては新しい道具を手にして、自社を分析する機会になります。上手に道具を使いこなすという感覚を養っていきましょう。

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