今回は”中小企業がデジタル化で成果が出せずに終わる原因を解消する方法”について書いてみます。

中小企業にとって、IT化やクラウド化、そしてDX化に至るまで、それが進んでいかない理由。それは社内の高齢化による新たなシステムへの毛嫌いや社長の決断が曖昧という事もありますが、本質的には”実行支援”が無いからです。DX化やデジタル推進が叫ばれる時代にあって、中小企業はどの様に対応していけば良いでしょうか?

実行支援が社内では難しい理由

ここで実行支援について定義をします。実行支援とは、顧客の業務において、ITツールやクラウドサービス、またはデジタル商材の利用を想定した新たな業務プロセスを設計し、導入から社内での推進をサポートし、期待効果が上がるように進捗も含めてサポートしてくれるサービスを指します。

こうした業務は社内の人材で対応できるのではないか。そう思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし中小企業と大手では社内リソースという点で違いがあります。

・専門知識を持った人材
・専門の部署

デジタル人材が不足しているというニュースを目にしますが、大手であってもすでに市場から適切な人材を採用することは難しい状況です。まして中小企業に、そうしたレベルの人材を採用できる確率は非常に低いのが実情です。またメディアに掲載される成功例(社内の人材がデジタル化を推進して成果をあげた的なニュース)は、実際には稀有なケースだからニュースになります。その事がどこの会社でも当たり前であれば記事にはなりません。

大手企業では専門部署やそうした知識を持った人材を採用するなどが可能です。ところが中小企業の場合、専門部署どころか社内で少しパソコン関係に詳しいレベルの若手社員が兼務している事が多く、あくまでも社内のよろず相談的な役割に留まっています。社内のDX推進担当と呼ばれる程の知識も経験も、まして社内での推進力(権限)もありません。導入は業者任せ、ツールの利用は現場任せとなり、結果としては使われないシステム。部分最適で連携しない継ぎ接ぎのシステムが広がっていきます。

ただしこれは仕方が無い事であり、やはりそうした専門の領域については、外部の力を借りて成果を上げるというのが中小企業の選択になります。

メーカーが実行支援を提供しきれない理由

デジタル化を提案する企業の実情はどうでしょうか。メーカーや販社も含めて”実行支援”を提供できる企業はほとんどありません。そうしたサービスを提供していたとしても、大手企業向けのサービスがほとんどでは無いでしょうか。

・導入支援
・カスタマーサクセスと名称を変えた保守サポート

多くの企業が提供しているのは、ツールの導入や初期設定、操作指導を行う導入支援とメールやチャット、コールセンターによる問い合わせ対応や障害対応。これが基本のサービスです。冒頭に定義した実行支援を提供しているサービスはほとんどありません。

ただ、これも仕方が無い事です。実行支援を行うには、個々のお客様に対して一定のリソースを割く必要があります。事前に決めた期待効果が出るまで、利用を促進し、使われない理由を潰し、業務の習慣を変える支援が必要です。

また深く顧客に関わる為には、提供しているサービスの機能面だけの知識ではなく、顧客の業務を理解している人材を育成する必要があります。法律も絡むようなバックオフィス系の業務であれば、そうした知識も常にアップデートされなければいけません。

こうした教育コストも含めると、実行支援を真剣に提供する為には一定のコストが必要となり、仮にそうしたサービスを提供できたとしても中小企業が利用できる価格にはなりません。結果としては、中小企業にとって必要な実行支援は提供されなくなります。

中小企業がデジタル推進を実現する方法

デジタル化を推進したいと考えているが、実行に不安を抱えている経営者はどうすれば良いでしょうか。その一つの解決策として外部企業も含めて、役割を決めた取り組みを推進するという方法があります。

・経営者 :期待効果の設定と社内への推進力を行使する
・社内担当:業務プロセスの専門家として変革の方向性を考える
・メーカー:導入支援、カスタマーサクセスを提供する
・地場の販社・士業など:進捗管理と課題解決を提案する

期待効果を定め、社内で反対が起きても推進すると決めて断行するのは経営者の役割です。これはデジタル化を推進して効果を上げる為には不可欠な要素です。ここを社内の担当に任せると、組織の力学などから徹底されずに終わるケースがあります。デジタル化が進まない本質的な理由に、社長が役割を履行しないという事があります。

社内担当は業務の専門家として対応します。人選は重要です。既存業務を守る(今の業務を正しいとして変革を嫌う)人を担当に選ぶと、その瞬間に頓挫します。業務を知っている。デジタルツールに抵抗感が少ない。変えることに抵抗がない。そんな条件を満たす社歴で3から5年程度の社員が最適かもしれません。期待効果を目指して既存業務のどこに課題があるのか。こだわりを捨てて対応できる人材を探してください。社歴はあくまでも目安です。社歴が長くても変える意識が高いのであれば、その人を中心に据えるという方法はあります。

社内改革を推進する上で、既存業務至上主義の方は抵抗勢力になります。「それは私が対応しているので問題ありません」。この様な発言が出る場合は注意をしてください。その人が抵抗勢力の可能性があります。自分の仕事を奪われる恐怖や不安が、改革を足止めします。

社外リソースの活用シーン

メーカー側はこれまで通りのサービスを提供する役割を担います。ただ、顧客としてメーカーには機能ベースの話だけではなく、業務の観点からのサポートも求めましょう。期待効果を出すための新たな業務プロセスに対して、メーカーの見地から、どの様に活用するのが成果に繋がりやすいか。立ち上げる事ではなく成果を出すことをメーカーとも握る必要があります。

そして最後に、KPIなどを設定した後に社内での進捗を管理する役割が必要です。これを社内の担当に任せると組織の力学に巻き込まれる危険性があります。そこで社長と関係がある外部企業にその役割を委託します。毎月の進捗を確認し、想定通りの進捗が無ければ、その原因を社内担当から確認します。その結果を経営者と共有し、社内の推進を妨げる障壁を壊していきます。

社内担当を守りながら、推進力を上げるために外部の力を借りるというのは必要な対策です。毎月進捗を確認し、その進行度合いを可能であればメーカーのカスタマーサクセス部隊とも共有しておきます。

この様に実行支援の役割を分けて推進する事で、デジタル化を推進できる可能性は高くなります。進捗管理などのサポートであれば、月額で数万円程度で対応してくれる会社もあるかと思います。お互いの専門知識を持ち寄りながら、デジタル化を推進するチームを結成してみてください。

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