今日は”変革のために必要な経営者の覚悟”について書いてみます。

経営者は”こうしたい”という意志を持つ必要があります。”こうしたい”という思いには、今はそうなっていないという現実があります。”こうしたい”には、そうなるために自分も含めて会社を変えていくという覚悟が必要です。その覚悟が無ければ変えることはできません。

意思ではなく意志を持つ

”こうしたい”と”そうなりたい”は同じようなニュアンスの言葉ですが、その主体が違います。漢字で表現すると、”そうなりたい”は【意思】であり、”こうしたい”は【意志】です。経営者と今後の方向性について話をしていると、「そうなると良いよね」という言葉が出て、その方向性で盛り上がることがあります。ただし、そこで盛り上がった内容が実際に実行されることはほとんどありません。それはボンヤリとした思いであり、憧れてはいるけれど是が非でも達成したい志にはなっていないからです。

”こうなりたい”には覚悟が必要と話をしました。これまでとは異なる未来を目指して自社を変えていく過程では、様々な困難がやってきます。

・主体となっていた売上を失う不安
・社員に理解されず離れていく不安
・周囲からのネガティブな意見で道に迷う不安

3つの不安を乗り越える覚悟

新しいことに軸足をズラすということは、それまでのモデルを捨てて、新たな成長の柱を築くことになります。会社のリソースは限られています。既存事業に携わっている社員を少しずつ新規事業にスライドし、既存事業が支えてくれている間に新規事業を成長させる必要があります。どこかの地点では、どちらを取るのかの選択を迫られるタイミングが来ます。その売上を一時的に失っても、新しい方向性に向かいたいのかどうか。そこに経営者としての覚悟が求められます。

新しい方向性は社内に不協和音を呼びます。これまでの事業を核として会社は組織化されているので、組織の中に根付いている文化や習慣を一時的には破壊する必要が出てきます。理念や考え方は同じでも、文化や習慣は変えるタイミングはきっと来ます。その時に、多くの場合、社員に理解されずに退職者が続出します。社内には動揺が走り、幹部社員からも新しい方向性に対して警鐘を鳴らされる可能性もあります。そうならないために、常に経営者の考え方を社内に発信し続け、何を目指しているのかを伝え続けることが大切です。共感し応援してくれる社員を育成しておくことが、組織再編のためには大切になります。社内にも伝わるまで伝え続けるという覚悟が求められます。

周囲の経営者仲間からも反対を受けることがあります。一時的に売上を失う。一時的に退職者が出る。そうした状況を心配した仲間からは、その方向性に進むことが本当に正しいのか?今がタイミングだったのか?と諌める声が聞こえるようになります。それは経営者自身も不安を抱えているタイミングで発生します。不安を感じても、その方向性に新しい未来が待っていると自分が信じ続けるという覚悟が求められます。

”そうなりたい”の意思の場合、こうした決断のタイミングで不安が勝り、結果として新しいことへの挑戦を断念してしまいます。”こうなりたい”という強い意志とそれに基づく覚悟が無ければ、不安を払拭して決断し続けることはできません。

経営者は本来、やりたい!を我慢できない

経営者とは”やりたいと真剣に考えたことは実現できる人”だと私は考えています。経営者が”やりたい!”と思えば、その日から行動することができます。これはよくある事ですが、相談に乗って私がリスクを感じ、少しネガティブな意見を伝えたとします。それでも経営者として”やりたい”が勝っている時は、そのリスクを払拭できる理由を話して賛同を得ようとします。仮に私の考え方が変わらなかったとしても、次のミーティングの時には「実は。。。」と言って”やりたい”ことを着手しています。

覚悟という少し重めの言葉を使っていますが、私が経営者とお話しする中で大切にしているのは”ワクワク感”です。

「覚悟はありますか?」
「ワクワクしますか?」

同じように、その方向性に対する経営者の感度を確認しているのですが、圧倒的にワクワクすることの方が実行力が高まります。ワクワクする!その事を考えるだけで動きたくなる!そう思えていれば、自ずと覚悟が決まっていきます。新しい方向性に舵を切る時には

・時流に合っているかどうか
・その事で世の中に迷惑をかけることは無いか
・最終的に自分で責任を取ることができるか

という事は確認をしますが、最も大切な事は「その方向性に進む事で、社長自身がワクワクしているかどうか」です。よく”こうしなければいけない”という言葉で決断される経営者もいらっしゃいますが、その場合も上手くいかないケースがほとんどです。

ワクワクが勝れば覚悟は無くても決断できる

”こうしなければいけない”の後ろには、【自分は苦手だが世の中的に、また会社の状況的にそれが必要だから、やむを得ず着手する】というニュアンスが隠れています。そこにはワクワク感もありません。そしていつでも他責にできる状況にあります。結果として、覚悟は決まりません。

”こうしたい!”と強く信じること。その未来を考えるとワクワクして堪らないこと。それがどんな困難も乗り越える覚悟につながります。既存のビジネスに限界を感じていて、新しい何かに挑戦をしようと考えている場合、大切な事は、まず経営者自身がどうしたいかです。自分勝手に考え、自分の心が満たされる方向性に向かっていくこと。ワクワクが止まらない未来を創造し続けること。どうしてもそれを実現したい!それを実現することが自分の使命だ!と思いこめること。そこまでのイメージが固まれば、実現する可能性は飛躍的に高まります。覚悟なんて考える事もなく、当たり前の様に決断ができるようになっているでしょう。覚悟という言葉が消えてしまう状態が、理想的なのかもしれません。

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