今回は”社長の経験は会社の財産!言葉ではなくストーリーで伝えることの大切さ”について書いてみます。

先日、経営者の方とお話をしていた時の事です。品質をとても大切にしている会社なのですが、急成長している状況で事故が発生しました。安全性も含めて非常に厳しい基準を設けていましたが、現場で作業をするのは協力会社でした。協力会社の選定も徹底していたのですが、事故は発生してしまいました。

経験が教えてくれていること

社長とこの事故が教えてくれている事は何かについて話し合いました。忙しさの中で調子に乗ってはいけないと神様が教えてくれた。トラブルが起きても逃げずに向き合う大切さを再度認識させてくれている。そんな言葉が出てきました。ただ、社長の姿勢から調子に乗るなんて事は無いし、トラブルから逃げるなんて事もあり得ません。その後も話をしていると、ふと昔を思い返して、こんな言葉を教えてくれました。

「10年後に他人が見ても分かる安全性」

社長が事業を始め、大きな取引を開始した際に、その大手企業の責任者から言われた一言だそうです。この言葉を貰った時も今回の様に事故を起こしてしまった時だったそうで、正直取引が終わってしまうと落ち込んだ様です。ただし、その時も逃げずに真摯に向き合う姿勢だけは貫きました。結果として、それ以降も取引は無くならず、その責任者との関係は、以降はより信頼して貰える様になったそうです。

そんな時に貰った言葉であり、会社の安全基準を一言で言い表している言葉です。誰が聞いても何に気をつけたら良いかも分かる言葉です。大きな事故を起こしたタイミングに貰った言葉だっただけに印象に残り、それが地肉になっています。

社長の体験は会社の財産

「もしかしたら、そうしたお客様から頂いた大切な言葉を会社の文化にするタイミングかもしれませんね」そんな話をしました。何気なく話された先ほどの言葉はとても分かり易く、そして社長自身の記憶に深く刻み込まれていました。社長自身はその言葉を、体験と一緒に記憶しており、事ある毎に思い返してリスタートしていました。

しかし、それを体験と一緒に知っているのは社長だけです。社長がそうした経験から作り上げたルールはありますが、そんなストーリーがあったと言う事を理解している社員は多くはありません。背景にどんな想いがあり、こんなストーリーからそのルールが生まれている。ルールは人の行動を規制しますが、そのルールがどうして生まれたのかを理解することで、単なるルールから社風に変わると感じました。

創業者は起業から節目節目にそうした言葉や経験をしています。大きくなる会社は、そうした素晴らしい出会いから学んでいる会社です。すべてが順風満帆な状態で事業を拡大するというのは中々ありません。多かれ少なかれ、記憶に深く刻み込まれる出来事が起こります。

そうした経験の積み重ねから、その会社の個性が生まれます。それが会社でのルールになるのですが、そこで働く人が多くなればなるほど、背景にあるストーリーが忘れられ、ルールだけが残ります。大切にすることで個性を作っているはずの経験から生まれたルールが、ただ社員の行動を規制するだけの言葉になってしまいます。

在宅勤務が当たり前になる今こそ大切

機能的であること。効率的である事は大切なことです。守るべきルールが徹底され、エラーが起き難い体制を作る事は重要です。ただ、どうしてそんなルールがあるのか。どんな経験から生まれたのかを、会社が大きくなる過程で経営者は明文化し残していくべきだと考えます。

社長が体験したこと。その時にお客様から頂いた大切な言葉。それは社長の財産であると同時に、その会社の財産でもあります。創業期に社長が経験したことと同じことを社員が追体験するのは困難です。だからこそ、伝えていき残していく必要があります。

会社が急成長しているタイミングだけではなく、最近では在宅勤務を採り入れる会社も増えてきました。優秀な社員を採用するためには、こうした働き方を積極的に取り入れる必要があります。同時に、本来であれば社員数が70名を超えた辺りから真剣に考える必要がある理念やビジョン、価値観の共有を早期に実施する必要が出てきました。

まとめ

その時に大切になるのが、ストーリーに基づくルールの伝達です。やってはいけない事を伝えるのではなく、大切にして欲しい事を経験に基づき伝えていきます。そのストーリーが定着していれば、自宅でいても、どこで働いていたとしても軸がブレる事は無くなります。

社長の経験は会社にとってはかけがえの無い貴重な財産です。それを再認識して、言葉ではなく体験を伝える様にしてください。それが文化作りになっていきます。

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