今回は”売れないものをどう売るか?という考え方を止めたら、ツキが戻って売れるようになる”について書いてみます。

キングジムの事例が教えてくれていること

簡単なことから徹底すること。無理なことはせずに、自然な流れに任せて、とにかく伸びている領域を素直に伸ばすこと。理想の姿で勝てるのは素晴らしいですが、まずは負けない基盤を作り、それから理想を追求する順番を大切にしていく必要があります。

「売れないものは諦める」で過去最高益、キングジム社長が語るコロナ禍の闘い方コロナ禍により窮地に立たされた企業は少なくない。とりわけ苦境がクローズアップされたのは飲食業界やイベント業界だ。しかし、あdiamond.jp

キングジムの適者生存戦略が書かれた記事です。2021年の決算は過去最高益を記録しています。最新年度の四半期はその反動でマイナス成長となっていましたが、これも変化対応で乗り切る様な気がします。

記事の中で目を引くのは3ページ目にある文章です。

「コロナ禍では『売れないものをどう売ろう』と考えず、売れるものを売った方がいい」

これは心理なのですが、どうしても”どう売れば良いのか?”と考えてしまいます。そうではなく、売れるものは何かを見つけること。自社の商品の中でも売れている商品に注目して、そこに向けて資源を投入すること。その発想がとても大切です。

ツキのある分野とは

時流適応は経営の原理原則ですが、時流が大きく変わる時にはたくさんのチャンスがやってきます。その時に大切なことは”ツキの原理”で考えることです。

・伸びている分野
・効率的な分野
・自信のある分野

時流が大きく変化している時に優先すべきは、伸びている分野または効率的な分野に集中していくことです。伸びている分野では、前年比・先月比・前日比などで120%以上の成長をしているセグメントを自社の売上構成の中から探します。顧客別やエリア別、業種別などいくつかの切り口で考えると、必ず成長している領域が発見できます。

効率的な分野とは、同じように営業をしていても、不思議に商談期間が短い。粗利が高い、などの商品群を指します。これはお客さまにとってニーズがある商品であり、自社にとってはツキのある分野になります。

キングジムの社長ではありませんが、売れない商品はツキを失っています。売れない商品を”どう売るか”を考えるのは、長所伸展の考え方にも反します。”どう売るか”を考えるよりも、売れる商品とは何かを探して、そこに集中することです。これはコロナ禍だから大切な視点ではなく、いつでもどんな時にでも必要な視点です。売れない物をどう売るか?という考え方を辞めたら、売れる物を売ろうという視点が生まれます。結果としてそれが、ツキの原理に従うことにもつながります。

コロナによって生まれたニューノーマルによって、人の習慣は2年半もの間、全く新しく塗り替えられました。変異株の影響から、半年程度はまだ影響がある中で生活を強いられると考えると、コロナ収束による揺り戻しはあったとしても、コロナ前と同じ習慣が戻るということはありません。

新しい時代には新しいを生み出し続ける

今は新しい時代に向けた過渡期であり、このタイミングで売れていない商品。伸びていない領域。効率的ではないカテゴリーは時流不適応である可能性が高いと考えるべきです。それが仮に主力商品であったとしても、冷静に見極めて業態を変化させることを考えるべきです。

キングジムの事例では、オフィス商品から家庭向けの商品や巣ごもりニーズに応える商品を展開し、過去最高益を生み出しました。今後も先細りするオフィス事務用品に代わる新しい主力を生み出すために、積極的に新商品を投入し続けています。

「ダメなことを経験しなければ、良いものは作れない」

これも記事中にある社長の言葉です。キングジムには失敗を責めない文化が根付いていて、10個中1個の成功があれば問題なしと考えているそうです。こうした文化が、時流が大きく変化するタイミングでは強みとなっています。これまでの常識を否定して、自社のリソースを活かして売れる商品を作ること。それ自体がキングジムという会社の独自固有の長所となっています。

優先すべきはこだわりなのか?

主力商品にこだわる。社長が考える理想に固執するということが決して間違っている訳ではありません。それが今の時代にはミスマッチであること。また新たなニーズを掘り起こす必要があるので時間が掛かること。その様な背景を理解して、それでもなお、その領域に挑戦すると決めている場合は、そのこだわりが最終的には武器になります。

ただ、直近の業績を回復したいと考えている場合には、時流適応とツキの原理を活かして、一旦は社長の理想を横に置いておき、真正面から市場を捉える必要があります。

”売れない”には理由があります。それを”売れる”に変えるには時間も労力も、そして資金も必要になります。その結果として、売れないままということもあります。それを見越して我慢し続けると決めているのかどうか。もしもそうでないのであれば、冷静にお客様と向き合うことです。

まとめ

売れる商品を売る。売れない商品は諦めて、売れるものに集中する。誰もが分かっているシンプルなことですが、それを文化にまで昇華させることは意外と簡単ではありません。もしも今、自社の事業が思う通りにいっていない場合は、一度理想やこだわりを脇に置いておき、冷静に自社を分析することから始めてください。

そこには見ないようにしていた顧客のニーズが隠れている可能性があります。まずはツキのある分野に集中すること。売れる領域に自社の長所があると考えてください。”どう売るか”を考えるよりも遥かに簡単に業績を伸ばすことができると感じるはずです。

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