今回は”価格競争が激化したら、安売りではなく低価格の新しい商品を開発する”について書いてみます。
競合を考えながら戦略を立てることはとても大切なことです。ただ、競合を見過ぎてしまうと同質化していきます。独自固有の長所を磨きながら、競合との違いを明確にし、同質の争いから抜け出す方法を考える必要があります。
競争が激化すると価格競争が発生する
先日もある社長との会話の中で気になった事がありました。競争環境が激化しており、少しずつシェアが落ちているという課題がありました。社長の分析では、低価格帯の商品のシェアが落ちているとのこと。自社よりも安い価格帯で提供する競合が出現しているため、その価格帯での成約率が落ちているという事でした。
中高価格帯のシェアは落ちておらず、経営のインパクトとしてはそれほどでは無いにしても、こうした綻びが後で響く危険性を感じているとの事でした。そこでより低価格な商品を投入して、その客層のシェアも回復することにしたというお話でした。
そこで以下のことをお伝えしました。
・理念に独自性があるので、理念を前提として欲しい
・下限の商品にこそ魂を込めて欲しい
低価格帯の商品を展開する場合、どうしても収益性も悪化します。そこでサービス品質を落として対応することを考えてしまいます。競合他社と横並びなサービスで、価格だけが基準の市場が誕生します。この状況が浸透すれば、お客様は価格でしか選ばなくなります。それは企業側が”価格で選ぶように”とお客様を教育した結果です。
安売りという考え方を捨てる
2026年まで不景気になると予測していますので、恐らくは低価格帯の商品に対する反応は高くなります。企業としては、数を捌けても業績が大きく伸びる訳ではありません。サービス提供型の商品であれば、低価格であっても実工数は必要です。そこで考え方を変える必要があります。
”安く売る”のではない
中高価格帯商品の劣化版ではない
考え方として、安売りという考え方を排除します。安売りと考えてしまうと、単純にサービスの質を落とそうを考えてしまいます。中高価格帯の商品の劣化版が低価格商品という位置付けになります。こうした発想になると、不思議と客質が悪くなっていきます。一時的には集客はできても、不思議とツキも落ちてしまうでしょう。
低価格の商品を提供する際には、その価格帯で最高のサービスをするためには、どうすれば良いか?を考えるべきです。つまり、その価格帯の新しい商品を創造するということです。そこで大切になるのが、理念やパーパスに基づく商品開発です。
その予算帯のお客様に最高のサービス
自社の存在意義はどこにあるのか。どんな世界を実現したいと考えたから、命懸けで経営をしているのか。その原点から商品を考えていきます。低価格帯に反応する顧客が増えるということは、不景気のサイクルに入った。または、その商品に対する価値が減価している、という事が考えられます。
今回のケースで考えると、不景気と価値の減価の両方がやってきていると感じました。日本でも所得階層が2極化していくと言われています。年収300万円以下の層がより増えていくと予測されています。そう考えると、自社にとっては低価格の商品も、顧客にとっては中高価格帯の予算に見えている可能性があります。
この感覚が掴めなければ、お客様の予算とのズレが修正できず、結果としては”品質が低い””満足度が低い”とマイナスのイメージが広がってしまいます。
その価格帯が予算のお客様でも最高に満足できる商品とは何か?
大切なことは、この考え方で商品を開発することです。安売りではなく、その予算帯のお客様に最高の満足を提供できる商品。それこそが、同質化の争いから抜け出し、自社の独自性でファンと創る方法だと考えています。
下限の商品に魂を込める。この価格帯でこんな満足を貰えるのであれば、さらに上の商品だったらどうなるのか。入り口になるであろう下限の商品にこそ、本気が無ければお客様をファンには出来ない。そんな大切なことを教えてくれる言葉です。
まとめ
競争が激化すると、品質の差異が作り難くなります。結果として価格競争が始まり、単に価格を下げただけの会社は淘汰されてしまいます。価格競争の中にあっても、その価格帯の商品の中にどれだけ独自固有の長所を入れる事ができるか。その事を真剣に話し合う必要があります。
理念を前提にして、その予算帯の顧客に対して何が提供できるのか。単に”安売り商品”と考えて下限商品に手を抜いてしまっていないか。もしも”安かろう悪かろう”な商品を生み出してしまっていたとしたら、その商品をきっかけにブランドイメージも低下する危険性があります。
市場は変化しています。競合が増えるということ以上に、外部環境が変化するという事も価格競争が激化する要因でもあります。競合と横並びで安売りをするのではなく、独自の戦略を描く事を大切にして下さい。