今回は”環境の変化、想定と違うシナリオだと感じたら”事実”を細かく見る習慣で解決しよう”について書いてみます。
経営者へのアドバイスをしている関係上、とても大切にしている事があります。それは事実に基づいて話をする事です。苦戦している時ほど、この”事実”が大切です。
事実が教えてくれた購買心理の変化
先日もある季節性の商売をされている方と話をしていました。売上の構成で前半のシーズンで6割、後半で4割という形で安定したビジネスをされていました。ところが、コロナに入ってから2年間は前半戦の数字は落としていないものの、後半の数字が伸びなくなりました。
当初は後半の4割のテコ入れを考えようとしていましたが、前半の商談の数字を見て気づくことがありました。それまで、見込みの高い顧客との成約率が80%を超えていたのですが、この2年間で50%前後まで落ち込んでいました。また、見込み度の高い顧客を育成するためのステップが形骸化しており、見込み度アップ率が落ちていました。
・後半の数字が落ちている
・前半の数字は維持しているが、商談の質が落ちている
・見込み度アップ率が15ポイント減少
・見込み度の高い顧客の成約率が30ポイント減少
この事実から類推できることは何でしょうか?顧客がより前半のシーズンで購入する傾向が強くなっており、前半で恐らく8割程度の数字を上げなければ目標は達成できないということです。
コロナによる市場環境の変化に伴って、顧客の購買心理に影響があったと考えられます。より先に購入決定する傾向が強くなっており、数字で見ると取りこぼしている商談が多く発生していました。
そこで今年度は、この2年間の傾向をベースとして、前半戦で8割の数字を達成するために営業戦略を変更することにしました。見込み度アップ率および成約率が落ちている理由を分析し、再度現場にその事を徹底するようにしました。
感覚的な言葉が間違いを生む
感覚的な事で考えると、後半が伸びないということ。前半は数字が確保できているので、後半を盛り上げるためにマーケティング強化が必要かも。。と考えてしまいます。もしも後半に向けてマーケティング予算を大幅に増やして広告をしたとしたら、どうなっていたでしょうか?多少の数値の改善は見られた可能性はありますが、前半の取りこぼしを取り戻すほどには数字の確保はできなかったと考えられます。
・多い、少ない
・比較的堅調
・落ちている、上がっている ・・・
こうした言葉は物事を感覚的に伝えるためには適していますが、事実を伝えてはいません。数字で置き換える事ができる事を”事実”と考えます。「多い、少ない」は何と比べて、どのくらい多いのか。例えば、同じ34%減という数字であっても、2/3なのか200/300なのかによって、インパクトが違います。また1件あたりの商談金額によっても違います。
話し手のバイアスが掛からない事実で語ること。これは経営者が決断をする際にこだわる必要があるポイントです。事実に基づく決断ができない場合は、事実となる情報を集める続ける事です。特に決断に迷う様な時には、この事実にこだわることが、最終的には経営者を助けることになります。
まとめ
創業経営者は特にその傾向にありますが、商売の勘(嗅覚)が非常に優れています。一定の規模まで大きくしてきた経営者は、この感度が非常に高く、数字では見えない閃きでチャンスを掴む事が多くあります。ただ、この商売の勘が利かずに低成長に苦しんでいる場合は、事実と向き合う癖づけをするべきです。
よく経営者には、不調な時ほど数字を細かく確認し、事実を拾い上げることです、とお伝えします。数字は良くも悪くも、今の会社の実態を見せてくれる鏡になります。見たくない事実もそこにはあるかもしれませんが、不調な時ほど細かく、何がその原因になっているかを見る必要があります。
コロナによって多くの企業が少なからず影響を受けています。顧客の心理も変化しており、細かくその事実を拾い上げることで変化を知ることができる可能性があります。何かおかしい。想定と違うと感じた時には、細かく数字を見ていきましょう。気になる事があれば細部までチェックし、その原因を確認しましょう。事実に基づく仮説・検証を繰り返すことで、時流に適応したビジネスモデルを描くことができるようになります。