今回は”パーパスやビジョン、生産性向上や業務効率アップと同じくらい大切な法人としての”哲学””について書いてみます。

経営にはビジネスモデルと哲学が必要だと考えています。哲学は辞書で調べるとこんな意味になります。

人生・世界、事物の根源のあり方・原理を、理性によって求めようとする学問。また、経験からつくりあげた人生観。

前職のコンサルティング会社は、マーケティングの手法などよりも経営者の生き方に対する指針となる哲学の領域が有名でした。創業者の経験から作り上げられた経営者にとって必要な経営観。これが言葉となって流通し、多くの経営者の生き方を支えていました。

経営には哲学が必要

どんな経営者であっても、すべてが順風満帆に進む訳ではありません。良い時もあれば苦しい時もあります。そうした様々な経営人生を乗り越えていくための心の支えとして、こうした哲学は存在しています。この様な人生の指針となる言葉に出会えた経営者は、ある意味では不安が無くなり、自分の信じた道を進むことができる様になります。

経営者もそうですが、法人としてもこうした哲学が必要だと感じます。オンラインが浸透し、直接会わずに物理的に分散して仕事をするモデルが少しずつ当たり前になっていく中で、そこに所属する社員が信じられる軸が、ますます必要になってきています。

哲学が無い会社はファンを作れない

生産性を上げること。無駄を省き、より効率的に業務を行うこと。人口減少で超高齢化に進む日本において、こうした視点で社内を改革していく必要性はよく理解できます。一方で、それと同じ位に大切になるのが、心の部分です。ネット全盛であろうが、オンラインで直接会わずに効率化できようが、人が行い人が判断するという部分は変わりません。効率的であることの価値は非常に高いですが、その一方で非効率になるかもしれませんが、心に残る対応というのはファンを作っていきます。

ロボットの導入やドローン配送の展開。注文から短時間で配送されるという超短時間配送など。テクノロジーが浸透しつつある社会において、ますます効率的であることの正義が幅を利かせるようになります。それ自体は時代の要請であるので、今後も広がっていくと考えています。注目されているのは、効率化された時間的な価値だけになっていますが、本当にそのサービスをリピートするかどうかは、”人”の要素が大きく絡んでくると感じます。

ドローン配送について気になることがあった時、それを真摯に聞いてくれるサポートはあるのか。超短時間配送だけど、それを届ける配達員はお客様対応がしっかりとできているのか。画期的なサービスであったとしても、人は必ず慣れていきます。それが当たり前になったり、競合のサービスが乱立する様になると、そのサービスを選ぶ理由が必要になります。その時に大切になるが、法人としての”哲学”が浸透している社員が提供するサービスでは無いかと考えています。

法人としての人生観=哲学の浸透方法

どれほど仕組み化しても、チェックリストなどを駆使してミスを減らしたとしても、そこに想いがあるかどうかはお客様には伝わります。だからこそ、パーパスやビジョンも重要な事ですが、その法人に所属する人間として守るべき人生観を、経営者は徹底していく必要があります。

・当たり前を言葉にする
・経営者が心から嫌悪することを言葉にする
・具体的な事例で言葉のイメージを統一する

お客様と接した時、どんな気持ちでいるべきなのか。そんな当たり前から言葉にして伝えることが大切です。それ位は分かっているだろうと考えるのではなく、どんな気持ちでお客様と接して欲しいのか。それがどうして大切なことなのかを言葉にします。当たり前の基準は、実は人によって違います。その当たり前の基準を揃えることがスタートです。

経営者が嫌だと感じることも言葉にします。これだけはして欲しくないNGを明確にしておきます。それ自体が法人としての個性になります。特にお客様と接する場面において経営者自身が大切にしていること。経験上、こういう対応だけは絶対にダメだと考えていることは言葉にして伝えます。

言葉と同時に具体的な事例(エピソード)でイメージを統一します。言葉はどこまでも曖昧で、個々人の経験によって程度の差が生まれます。基準を揃える為には、誰もがイメージできる事例とセットで語るようにします。物語は記憶として定着し易いという効果があります。その効果を活用して、言葉と事例をセットにして浸透を図っていきます。

まとめ

パーパスやビジョンなど、大きな方向性を示す言葉に注目が集まっています。それも重要ですが、その会社の文化や風土を形成するのは、そこで働く人たちです。日々の蓄積が文化を作っていきます。オンラインが当たり前になり、在宅勤務などの分散型の働き方が前提となっていく時代において、同じ根っこで働く仲間であることの証明は、同じ考え方で行動できる”哲学”の浸透にあると考えています。

長く続く会社には大切にしている哲学があります。それは法人であっても”心”を養うことが大切だという証だと考えています。クレームやミスが車内で増えてきていると感じた場合、その根っこには哲学が欠けているということがあります。文化を作る為に”哲学”を徹底する合図かもしれません。

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