今回は”経営者が心のバランスを保つために必要な本音と建て前を使いこなし”について書いてみます。

人の行動には表と裏の欲求が同居しています。たまたま見た記事の中に「Z世代に高カロリーフードが流行している」とありました。理由はコロナによる外出制限などのストレスの発散として、食事くらいは自由にという感情からブームになったと解説されていました。

表の欲求と言い訳

表の欲求は建て前です。その行動を周囲に正当化して貰うための言い訳と考えても良いかもしれません。高カロリーな食べ物は健康的では無いという風潮に対して、それでも食べたいという欲求を隠すために”コロナによるストレス”を言い訳にしました。この高カロリーな食べ物は”ギルティーフード”と呼ばれているようですが、この呼び名も”言い訳”の正当化を後押ししていますね。罪深いと分かっていても抑圧された生活に自由を取り戻したい!そんな思いから食べている高カロリーフード。自分の中で物語ができていきそうです。

これをSNSで発信しているというのも”言い訳”を証明しています。自分はこんなに罪深い食べ物を食べているんだ!自由だ!という叫びの表現として、高カロリーフードは、見た目で罪深さを感じる食べ物が選ばれています。見た目は普通だが、とてもカロリーが高いという商品は選ばれていません。仲間にも、こんな罪深い食べ物を食べたよという体験をシェアする事で、言い訳の正当化をしています。

ただし、恐らくは直感的にそうした罪深い高カロリーな食べ物が食べたいという素直な欲求が要因では無いかと感じています。ただ食べたい。美味しそう。でも、健康ブームなどがあり、そうした食べ物を好んで食べることに罪悪感がある。そんな葛藤が、ギルティーフードやSNSでのシェアを通して解消されたのが、今回のブームなのでは無いかと考察しています。

本音と現実世界の折り合い

人はいつも誰かとの関わりの中で生きています。そこには”空気”が生まれ、明文化はされていないものの、従わないといけない暗黙のルールが存在します。その見えない空気を感じながら、自分のポジションをイメージして行動を選択します。それは根源的な欲求とは違う行動であったとしても、空気を優先して選択する可能性があることを示しています。そうした本音と建前の行動ギャップがストレスとなります。そこで、そのはけ口を探す事で、人は心の折り合いを付けていきます。

SNSなどで複数アカウントを運用する若者の中にも、自分がハマっている沼用のアカウントを複数持っている人がいます。そのアカウントであれば、現実世界の空気とは違う、根源的な欲求を抱えた自分を表現して良いと決めて、心のバランスを取っています。本当の自分を出せる場所があることで、現実世界との折り合いを付けています。

人は本音の欲求の正当化を図るために、公で通じる”言い訳”武器にして、現実と本音の世界の折り合いを付けています。本音を解放できる環境を整える事でバランスを保つことができるようになります。この本音を言い訳として発散できる環境は大切です。

経営者に必要な本音と空気

経営者にも同じことが言えます。本当に自分が望んでいることと周囲から感じる何となくの空気から、そうしなければいけないと思い込んでいること。そのバランスが取れなくなると一気に崩れていきます。

会社を大きくする
会社の規模ではなく、自分の満足を追求する

世の中で話題になったり、成功者として語られる経営者は、若くして多くの資金を調達して会社を成長させ、上場させた人が多いです。また地域でも名士となる経営者は、規模の大きい、または急成長している会社がほとんどです。こうした”これが正解という空気”が生まれると、正解は一つしかないと思い込んでしまいます。

例えば、会社には経営者の”私的な会社”から社員みんなの”公的な会社”へと変化するタイミングがあります。それは社長個人の”我欲”が満たされた後でしか起きません。自分の人生を賭けて、リスクを全て背負って起業した訳ですから、それに見合うリターンを得る事=我欲を満たすことが最初に必要です。その”我欲”を早くに満たせた経営者は、公的な会社へと進化することができます。

私的な会社のままで終わる
公的な会社へと進化する

これはどちらが正しいでしょうか?それは経営者の選択です。周りの人や経営者向けの塾などに通うと、公的な会社への進化が当たり前とされます。理屈では分かっていても本音ではそう思えていない時、中途半端にそうしようと考えても上手くはいきません。

本音を無視すると失敗する

経営者がツキを落とすのは、自分がワクワクしないことを”やらされている瞬間”です。不得意なこと、嫌いなこと、本音ではやりたくないと思っていることに従事させられている間は、事業は好転しません。思い通りにいかないなと感じている時ほど、自分と内観してみます。すると本音ではやりたく無いと感じていたことで、周囲の空気を感じて”やってみます”と答えていたことに気づくはずです。それを続けても、さらにツキを落とすことになります。

本音を周囲に馴染ませて堂々と生きること。我欲が満たされていないと感じるのであれば、公的な会社を目指すとするのではなく”少数精鋭できらりと光る会社”を目指していると表明することです。小さなまま、今の状態がちょうど良いと感じているのであれば、それを正当化できる言い訳を用意しましょう。もっと稼ぎたい!良い暮らしをしたい!と感じているのであれば、”地域で一番儲かる会社を目指す”など、表現を和らげながら本音で頑張れる会社作りをしましょう。

会社の正解を作ることができるのは経営者だけです。その経営者が、本音では健康志向に疑問があって、もっと高カロリーな物を食べたいと考えているのは不健康です。高カロリーな物を食べることに罪悪感を覚えずに楽しめる環境を作ることで、やりたい事に自分のリソースを注ぐことができるようになります。まずは本音を知り、それを周囲への建前として整えていくこと。経営者がツキを失わないためには大切なことです。

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